2011年9月23日金曜日

ESP(本)応援祭 第五回

カフェ・ズミ店主の泉秀樹氏(左)と主催者の渡邊未帆氏(右)

 5月28日(日)に開催された吉祥寺ズミのシリーズ講演「ESP(本)応援祭」の第五回「West CoastからNew Yorkへやってきた演奏家たち」は、例によって、ニュー・ジャズ・ムーヴメントの世界同時性を意識の片隅に置きながら、合衆国内の音楽動向に焦点をあて、早いものでは1950年代末からニューヨークの音楽シーンに登場し、ESPレーベルにも足跡を残した西海岸出身のミュージシャンをまとめて紹介する回となった。

 かけられたアルバムは、オーネット・コールマン『Town Hall 1962』(ESP 1006, 1962)、プリンス・ラッシャ=ソニー・シモンズ『The Cry !』(Contemporary, 1962)、バイロン・アレン『The Byron Allen Trio』(ESP 1005, 1964)、ソニー・シモンズ『Staying On The Watch』(ESP 1030, 1966)、ソニー・シモンズ『Music From The Spheres』(ESP 1043, 1966)、ジェームズ・ジトロ『James Zitro』(ESP 1052, 1967)、アラン・プラスキン『Encounter』(Three Blind Mice, 1971)、ザ・シー・アンサンブル『We Move Together』(ESP 3018, 1974)など。

 ソニー・シモンズとの関係で、女性トランぺット奏者バーバラ・ドナルド、テナー奏者バート・ウィルソン、ジョン・スティーヴンスが主宰した英国のスポンタニアス・ミュージック・アンサンブル(SME)に参加したベース奏者ブルース・ケール、数年後に来日して金井英人の紹介でスリー・ブラインド・マイスに録音を残したアルト奏者アラン・プラスキンなどがフィーチャーされた。

 またドン・チェリーと交替したコールマン・カルテットの二代目トランペット奏者ボビー・ブラッドフォードは、アルト奏者ジョン・カーターと双頭バンドを結成して活動することになるが、やはり渡英してSMEと共演しており、この時期にはアメリカとヨーロッパが音楽的には地続きであったことが強調された。当初予定されていたアルト奏者ノア・ハワードは、時間内に触れることができず、ドナルド・ギャレット、フランク・ライト、デューイ・レッドマンなどともあわせ、紹介する機会を別にもうけるとのこと。

 ジャズ界から一時身を引いていた時期に、自主公演されたオーネット・コールマンのタウンホール・コンサートは、LP二枚分が録音されており、現在私たちがESP盤で聴くことができるのは、実のところ、この演奏会でオーネットがやろうとしたことの半分でしかない。いまにいたるまで録音が未発表になっている理由が、著作権関係の問題なのか、オーネット自身の音楽的問題なのか詳らかにしないが、発表されたものだけでも、ニュー・ジャズ期においてオーネットが目指していたものの特異性を知るにはじゅうぶんである。彼自身が後年、自分は最初からハーモロディックを実践していた、それをそう言わなかったのは、とても理解されないと思ったからだと証言するように、自由奔放にコンセプトを出しているようでいながら、そこには後年の活動につながるような一貫した「コールマン的秩序」(悠雅彦)というものがはっきりと感じられる。ニュー・ジャズ・ムーヴメントの衰退後を、オーネットの音楽が生き残っただけでなく、プライムタイムの活動などを通してより大きく広がっていくことになったのも、けっして偶然ではないように思われる。■

パソコンの故障で手書きになった
一階玄関口の本日のお品書き









[初出:mixi 2011-05-19「ESP(本)応援祭 第五回」]

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