2011年10月6日木曜日

十年来の友人

2011年3月21日・千駄ヶ谷ループライン。シリーズ「実験音楽を語る」開場前

 ステージいっぱいに広げたオブジェを使っておこなうデモンストレーション・ライヴのため、早目に会場入りした今井和雄のセッティング作業を片目に、本を読み、雑談を交わしながら、少しずつ緊張感を高めていくようだった秋山徹次(左)と中村としまる(右)は、「蟬印象派」のデュオとしても活動する十年来の友人である。ベタベタとするわけではないにもかかわらず、ふたりの間には、なんともやわらかい空気感がかもしだされている。「盤上盤外」の言葉どおり、ステージ上で演奏するときもトークするときも、あるいはステージの上でも下でも、環境に対するミュージシャンのふるまいかたは変わらない。それを日常生活とステージとが地続きになっているということもできるし、ステージの外においてすでに演奏がはじまっているという言い方もできる。だから、本当のことを言えば、ステージの上で特別な話をする必要もないのだが、同時に、そうしたなんの変哲もない話が、「飲み屋の会話」であってはならないというむずかしさを備えている。私たちがそこですることになるのは、公的な表明をともなう語りのスタイルをとることで、はじめて語ることが可能になるような内容のことを語るということなのだろう。この日の秋山徹次は、ギター演奏するときとは別の帽子をかぶってきた。それは彼があるスタイルを選択してここにやってきていることを示している。すでにトークがはじまっているのだ。


[初出:mixi 2011-03-23「十年来の友人」]