2011年10月6日木曜日

今井和雄の振動する世界


 即興演奏とのかかわりを議論したシリーズ最終回の「実験音楽を語る」では、フォーラムに先立つ冒頭の30分で、今井和雄のデモンストレーション・ライヴがおこなわれた。振動する世界、世界は振動するというヴィジョンをコンセプトに組み立てられた装置は、大小のヴァイブレイターやモーターで動くガジェットが、金属ボウルや金属板などに触れて発するノイズを、コンタクト・マイクで拾って拡大するというもので、パフォーマーの周囲に配置された震動源がひとつずつ “点火” されることで、場がゆっくりとヴァイブレーションで満たされていくという過程を、そのまま演奏にするものであった。はたしてこれが大震災を意識したパフォーマンスだったのかどうか、後半のフォーラムで本人に確認し忘れてしまったが、いずれにせよ、災後10日という直近の時点でのイメージ連鎖は避けられないだろう。ひとつひとつの発音源は、美術的なオブジェというより、生命力が宿った呪物のようで、固有の存在感をたたえていた。準備に長い時間をかけながら、パフォーマーの周囲にぐるりと円を描いてインスタレーションしていく際、今井があれこれのオブジェを指して、「この人」と呼んでいたのがとても印象的だった。



[初出:mixi 2011-04-05「振動する世界」/加筆修正のうえ転載]